パトリシア・A・マキリップ (著), 井辻 朱美 (翻訳)
文庫: 398 p 798円 早川書房
欧米の叙情的な小説を翻訳読むとき「原作の雰囲気も同じなのかしら?」とよく疑問に思います。
そして、評価が高い小説であればあるほど痛切に、英文の原作を読めないことが悔やまれます。小説は、文章の意味のみで語るものではなく、行間やその言い回しによって世界観が作られていくと思っているからです。
この『影のオンブリア』を読み終わったときも、原作が描いている世界への渇望にひりひりする想いでした。
中世風の世界を描く翻訳小説のとき、新聞ではカタカナで表記するものも徹底的に漢字で表記してゆきます。たしかに、「中世風」にはなりますが、流麗な雰囲気は損なわれます。
例えば、鵞鳥(ガチョウ)、鼠(ネズミ)、隼(ハヤブサ)、螺旋(ラセン)、臘燭(ロウソク)、鼈甲(ベッコウ)、天鵞絨(ビロード)などなど…。
きっと、原作ではそんな駆け引きナシに流麗な中世風の世界で幻想的な物語がつづられているのだろうなぁ。うー。
もう少し配慮してよ>早川書房さん
それを差し引いても、すばらしいファンタジー小説だったけどね。